ソコロフ
ピアノリサイタル@Wiesbaden
ギリシャ神殿のような会場で行われたソコロフ氏のリサイタル。
私は、ソコロフ氏がステージで聞き取ってる音がそのまま聴こえてくる場所に座りました。背後にピタッと、一緒に弾いたようなほど集中しました。
(少々勝手ではありますが...)私なりにソコロフ氏から受け取ったメッセージをお伝えします。
『出したい音に向かうことが挑戦であり、技としてリスクがあったとしても、食らいつくべき。』
もちろん、ソコロフ氏の演奏にリスクなどという言葉は存在しませんが、全ては出したい音あっての技術であって、技術を見せた結果出てきたような音の羅列になっていないか、自分の演奏を反省、考えさせられました。
もうひとつは、
『晩年....』
という壮大なテーマが脳裏をめぐりました。これはシューマンのクライスレリアーナ、ブラームスの118に込められたメッセージが、言霊音霊となっていたと思いますが、晩年に差しかかったソコロフ氏の姿と重なる何かがあったことは確かです。
ソコロフ氏の姿と演奏は、青年のような魂と情熱を際立たせており、同時に作曲家達が残したものを、原石のように見ることができました。そして、その原石こそ、私がドイツで学んだ「憧憬(Sehnsucht)」であることをはっきりと感じ取る事ができました。
「“Sehnsucht“」
これはドイツロマン派の根幹となるキーワードで、私はこれをアルニム、ロバノフ、ウゴルスキー氏から、その境地と表現方法を学びました。とても大事にしている世界観のひとつですが、ソコロフ氏の演奏で、それらが晩年となった時に輝きを増す世界であることを感得した次第です。
ベートーヴェンも、ブラームスも、シューマンも降りてきて嘆賞していたかのような演奏会でした。
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